Mutiny on the Bounty "Digital Tropics"の日本盤リリース記念と致しまして、
Guitar & VocalsのNicolas Przeorにインタビューを行いました!
"Digital Tropics"についての制作過程や彼らが住むルクセンブルクという国の音楽状況について語ってもらっています。
日本ではあまり知られていないルクセンブルクと言うに国に少しでも興味を持ってもらえたらと思います。

Interview & translation by
Tak Yamamoto

君たちは初の日本デビューということで、日本の音楽ファンのために少し君たちの自己紹介をしてもらえる。あとバンド名についてもね。

Nicolas そうだね、今までの過去2作品については日本のレーベルを通してディストロしてもらっていたけど、今回が初の日本国内盤のリリースになるよ。(過去2作品については)"Danger Mouth"はStiffslack、"Trails"についてはParabolicaのようにね。
僕らは2004年結成したバンドで、これまでもヨーロッパやアメリカで600回ほどのショウを行ってきたんだ。今回リリースする"Digital Tropics"は僕らの3作目の作品になる。
バ ンド名の『バウンティ号の叛乱"Mutiny on the Bounty"』だけど、この名は僕たちの間でのとてもパーソナルなジョークさ。バンドを結成した頃を振り返ると、皆もよく知るブライ船長の歴史を引用したというよりは、僕らがオーディエンスに見せつけたい何か壮大なものを反映しているのかな。

海外では、既に新作"Digital Tropics" がデジタル、CD、ヴァイナルなどがBandcampのサイトを通じてリリースされているけど、リスナーの評判はどう?

Nicolas 凄く良い感じだよ!いくつかのファンは完全にインストになっていて、びっくりしたみたいだけど、ギターとメロディが良い仕事をしているから、結局は誰も問題にはしてないね。僕はこの作品のことをとてもパーソナルな作品だと捉えていてね。今のバンドの姿を良く表しているし、僕らが生まれてきたマスロックやハードコアシーンにすら全く囚われない作品だからね。むしろ退屈な人たちに対するダンスアルバムだとみんなに伝えているよ。

前作"Trials"は最高だね!あのポストハードコアのようなシャウトも好きだけど、今作"Digital Tropics"は完全にヴォーカルを排除してしまったのはどうしてなのかな?バンドとしても何か変化があったの?

Nicolas 簡単に答えいるように思うかもしれないけど、その時は新曲にヴォーカルが必要ないと思っていた、としか言えないかな。ヴォーカルラインをギターサウンドで埋めるという作業は、とても大変だったよ。僕らは、いつも楽曲にありったけの情報を詰め込むバンドでありたいと思っていたけれど、このときは一息つこうと決めたんだ。でも今後ずっとヴォーカルを使わないって意味じゃないし、次の作品がアカペラのマスロックアルバムになったとして、そのことは誰も知らないと思うよ(笑)

Brontide、Jean Jean、初期Aucan、あるいは攻撃的なBattles?前述のバンドたちを思い浮かべるけど、今回の作品を作る中で影響を受けたものはあるかい?

Nicolas ありがとう!もちろん彼らはどれも最高だし、僕らも彼らの音楽を聴いているよ。だけど、僕らはもっと大衆的で、もっと深いところから影響を受けているんだ。僕らはたくさんの異なった音楽を聴いていて、趣向も他の多くのバンドと大きく異なっている。もちろんBattlesやAdebisi Shankのようなバンドは、メンバーも皆大好きさ。ただ、今回の作品はオールドスクールなヒップホップ、80年代ポップス、ソウルや当然だけどエレクトロニカやマスロックの影響を受けているんだ。初めてのことだけど、こうやって僕らの音楽性をさらけ出すことを恐れてはいないよ。

"Digital Tropics"いう名前の意味や、この赤いアートワークを選んだ理由を教えてもらえるかな。

Nicolas "Digital Tropics"というのは、僕らの音楽の曖昧さを映し出しているところもあるかな。正に冷熱の衝突のような、僕らは自分たちの音がとりわけ冷徹な音だと感じるんだよね。全てのアルバムがシンセティックで、コンピューターサウンドあるいはドラムマシンに接近している。一方で、このアルバムはもっとダンサンブルで、恐らく以前の作品よりずっと明るい作品になっているんだ。これはカリプソ(民謡風のジャズ歌謡)のヴァイヴを携えているんだけれど、Tropicsが表しているのはこのことさ。アートワークはアメリカの写真家Kim Keeverのものだ。彼は水に雫を垂らして、この溶岩とも煙ともつかないミステリアスな写真を撮ってくれた。僕らはこのイメージが力強くて、ある意味で はこの音楽を代弁してくれるような、闇と光を表現してくれるようなものだと思ったんだ。とても抽象的でありながら具象的な、僕らの音楽からも強く表現されている矛盾した自然、それが"Digital Tropics"って訳さ。

個人的には"dance AUTOMATON dance"という曲が、速くてノリが良くて最高に好きだね!

Nicolas “dance AUTOMATON dance”は、ほぼダンス・ソングだね。僕はこの曲がディスコで流されること、そして実はロックミュージシャンが演じている曲だって気づかないと信じているよ。僕らはダンスやテクノの要素を散りばめた、とても速い楽曲を作ろうとしたんだ。最後まで組み上げたりぶち壊したりの連続だったよ。本当に地道な作業だった。僕らはギターがギターらしい音を奏でるクラシックなロックアルバムを作りたかった訳でも、クラシックなロックソングを書きたかった訳じゃ無い。僕らにとって、いつもと何か違うモノを作りたかったし、それが上手くいったと願っているよ(笑)

今後はもう歌わないの?

Nicolas 違うと思う。さっき言った通り、僕らはたくさんの異なったことを試してみたいと思っている。まだ昔の曲も時々やっているよ。そして、次の作品から歌うことを締め出したりはしない。僕らは同じ事を何度もやりたくないしね。いつでも新しいことに挑戦したいと思っているよ(笑)

自分たちの音楽をマスロックだと言われること、そして最近のマスロックシーンに対してどう思う?

Nicolas 僕らは自分たちの音楽性をマスロックだと定義しているね。だけど、率直に言うと、僕らの音楽は人々がよく聴くそれと何か異なっていると思う。例えば、今までの僕らの音楽がとてもトリッキーだったとして、それは(クラシックなものと)異なった音楽を作りだそうとしてきただけで、マスロックをやってきたと感じたことは一度も無いな。僕らはマスロックに分類されていることや、マスロックシーンを担うたくさんのバンドを聴いている。お互いを助けてくれる、とてもタイトで団結したシーンだと思うよ。少なくともヨーロッパではどこのバンドでもお互いを知っているし、どこでも演奏する場所を与えてくれるようなDIY精神に溢れているよ。

ところで、ルクセンブルクってどういう所なの?マスロックやポストロック、ポストハードコアみたいな音楽は人気があるの?

Nicolas ルクセンブルクはとても小さい国だよ。たった50万人が住む国で、北から南までも1時間で行けるよ。でも、とても力強い音楽文化がある。たくさんのバンドがここで演奏しているし、とても良いモノが確かにあるよ。この(マスロックという)音楽は、ルクセンブルクでは人気があるよ(自分の感覚ではあるけど…)。“No Metal In This Battle”や“Mount Stealth”のようなバンドは最高だし、とてもクールなバンドがたくさんいるよ!一番活発な音楽シーンは恐らくメタルやハードコアだと思うけど、独特なバンドを確実に見つけられると思うよ!

今、日本ツアーを計画していると聞いたけど、何か日本のファンへ何か一言もらえる?

Nicolas 日本は正に僕らにとっての夢だよ。日本はたくさんのバンドがいて、音楽シーンは最高にクレイジーだし、本当に行きたくてたまらないよ!今年の11月に初のジャパンツアーを行う予定だけど、凄くエキサイティングなことだね!また、すぐに日本へ戻って来れるように日本のみんなが僕らの音楽を気に入ってくれることを願うばかりだよ!